生成AIは非常に便利ですが、使い方を間違えると「個人情報漏えい」という重大な事故を引き起こすリスクがあります。
「お客様の名前をうっかりChatGPTに入力してしまった…」
これだけで、法律違反になる可能性があることを知っていますか?
この記事では、生成AIを安全に使うために必須の知識である「個人情報保護法」の基本と、AI時代に特に重要となる「匿名加工情報」や「要配慮個人情報」について、わかりやすく解説します。
個人情報保護法とは
個人情報保護法は、個人の権利や利益を守るために、企業などが個人情報をどう扱うべきかルールを定めた法律です。
時代に合わせて何度か改正が行われており(改正個人情報保護法)、AIやビッグデータの活用を見据えたルール変更もなされています。
- 個人情報保護委員会:この法律を所管し、監視・監督を行う国の機関です。違反した企業に勧告や命令を出します。
- 個人情報取扱事業者:個人情報データベース等を事業に使っている事業者のこと。大企業だけでなく、中小企業や個人事業主も対象になります。
個人情報の詳細な定義
そもそも「個人情報」とはどこまでの範囲を指すのでしょうか?
基本的には、「生存する個人に関する情報で、特定の個人を識別できるもの」を指します。
氏名、生年月日、住所などはもちろんですが、それ単体では分からなくても、他の情報と照らし合わせることで簡単に特定できる場合も個人情報に含まれます。
個人識別符号
「これさえあれば確実に本人だと分かる」という特定の符号やデータも、個人情報として扱われます。これを個人識別符号と呼びます。
- 身体的特徴:指紋データ、顔認証データ、DNA情報など。
- 公的な番号:マイナンバー(個人番号)、パスポート番号、運転免許証番号、基礎年金番号など。
これらは、名前が書いていなくても単体で「個人情報」となります。

要配慮個人情報と機微(センシティブ)情報
個人情報の中には、「他人に知られると差別や偏見の原因になりかねない」特にデリケートな情報があります。これらは通常の個人情報よりも厳格な管理が求められます。
要配慮個人情報
本人の不当な差別や偏見が生じないように、特に配慮が必要な情報です。
これらを取得するには、原則として「本人の事前の同意」が必ず必要です。
- 人種、信条(宗教や思想)、社会的身分
- 病歴、身体障害、健康診断の結果
- 犯罪歴、犯罪被害の事実 など
機微(センシティブ)情報
法律用語としての「要配慮個人情報」とほぼ重なりますが、プライバシーに関わる特に敏感な情報を指す一般的な言葉です。
生成AIに相談する際、「最近、病気で悩んでいて…」といった内容を入力することは、この機微情報の入力にあたる可能性があるため注意が必要です。

匿名加工情報
AIやビッグデータの分野で非常に重要なのが匿名加工情報です。
これは、特定の個人を識別できないように個人情報を加工し、元のデータに戻せない(復元できない)ようにしたものを指します。
匿名加工情報にすれば、本人の同意がなくても、データの利活用(AIの学習データとしての利用や、第三者への提供)が可能になります。
マスキング
データを匿名化するための代表的な手法がマスキングです。
- 氏名を「Aさん」「Bさん」に置き換える。
- 住所を「東京都〇〇区」までにして、番地を消す(黒塗りにする)。
- 特異なデータ(最高齢の120歳など)を削除する。
このように加工することで、プライバシーを守りながら、AIに有用な統計データなどを学習させることができるようになります。

生成AI活用における個人情報の取り扱い
最後に、私たちが生成AIを使う際の実践的な注意点をまとめます。
- プロンプトに個人情報を入れないChatGPTなどのAIに入力した情報は、AIの学習データとして再利用される可能性があります(オプトアウト設定をしていない場合)。顧客の氏名や電話番号をプロンプトに入力するのは絶対に避けましょう。
- 生成物のチェックAIが生成した文章や画像が、偶然誰かの個人情報(実在する住所や顔など)を含んでしまっている可能性があります(ハルシネーションの一種)。公開前に必ず確認が必要です。
- 利用規約の確認使用するAIサービスが、入力データをどのように扱うか(学習に使うのか、保存期間はどれくらいか)を規約で確認することが、個人情報取扱事業者としての義務です。
まとめ
今回の記事では、個人情報保護の基本について解説しました。
- 個人識別符号:マイナンバーや指紋など、それだけで個人が特定できるもの。
- 要配慮個人情報:病歴や前科など、取得に同意が必要なデリケートな情報。
- 匿名加工情報:個人を特定できないように加工し、同意なしで利活用できるようにしたデータ。
- マスキング:データを隠したり置き換えたりする加工技術。
「AIに入力する前に、個人情報はマスキングする」。これがAI時代の新しいマナーであり、法律を守るための鉄則です。


コメント